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 バナナを1本

 腰を悪くしてから整骨院に通っているが、施術中に"お話"なんかをする。"お話"はたぶんに営業要素を含み(長く通わせるために)、不用意にプライベートに踏み込まれる感じがあり、わたしはこれが少し苦手だ。それはまあいい。その"お話"のなかで朝食のことが話題となり、わたしがほとんど朝食は食べないと言うと、先生がしきりと「朝食にはバナナ」とすすめてくる。呼吸するように筋トレできるゴリゴリの体育会系の人が言う話だから、まあなにか、この人たちの間にはそういう信仰めいたものがあるのかもしれない、「鶏ささみは神」と同種のものだろうか、わたしは人の信仰を尊重するなどと思っていた。

 今日バナナのことをふと思い、「バナナ 1本 カロリー」と検索してみたら、ちょっとびっくりしたのだが、1本分のカロリーは84kcalであり、おにぎり1個分より少ないのである。しかも、食物繊維、ビタミン、ミネラルを含む。なかなか効率の良い食材らしいのだ。仕事帰りにスーパーでバナナを買って帰った。

チャールズ・ブコウスキー『ブコウスキーの酔いどれ紀行』中川五郎訳 マイケル・モンフォート写真 ちくま文庫

 昔、まわりで彼を読んでいる人が多かった。

 「いいよ。ほんとうに」と熱心に薦める人、「まあ、おもしろいよ」と乾いた笑みを口元に浮かべる人、「いいんだよなー」と独り言のように言いながら視線が遠いところへ飛んでいく人、いろいろな人がいた。今、みんなどうしてるかしら。

 大学近くの古本屋で見つけたときにすぐに買ったがなぜか読まなかった。何回かの引っ越しを経ても常に本棚の一番奥にあり続けたが、今の家では本棚をもつことをやめて床に積んでいる状態で、たぶんどこかにある。今年ちくま文庫に入ったらしく、書店で平積みされているのを手に取って見たら、思わず買ってしまった。だぶり本になった。まあ、いいか。

 今回読んで思ったのが、ハードカバーを買った昔あの時に読んでいたら、わたしは詩人の生きざまのほんの一部にかぶれて酒の飲み方を真似、急性アルコール中毒となって病院に行っただろうな、ということだった。タイトルに「酔いどれ」とあるが、ほんとうにひどくひどい飲み方だ。ヨーロッパ滞在中、彼の二日酔いは続く。ちりちりする。ちりちりちり。赤ワインが飲みたくなる。

 写真がいい。同行した写真家のマイケルが撮った。写真についているキャプションもいい。キャプションはすべて、ブコウスキーによる本文から採られている。全部はほんとうじゃない、ひどく酒臭いなかにほんの少しの無垢がある紀行文。

 

 

 

 

 

見た夢・落ちる夢

落下・転落の夢は、地面に落ちて死んでしまえば吉夢らしい。
わたしは落ちる夢をよくみるが、夢の中で死んだことがない。

 

自転車に乗って宙に浮いている。

眼下に巨大な船がある。

航空母艦のようだが、何しろ大きくて船尾はかすんで見えるくらいだ。

突然、わたしの自転車は急降下する。

落ちていくのだ。船との距離がどんどん縮まるが、恐怖はない。

そこで場面は切り替わり、台湾の田舎町。

乾いた白っぽい道を歩いている。

わたしがただ泣くばかりなので、わたしはどうしていいのかわからない。すこしはなれた所に座って、そこからいろいろと声をかけてみる。

なにか食べたほうがいいよ。映画でもみに行ったら? 落語もいいかもしれない。ほら、梶井の書いた城のある町に行ってみたいって言ってたじゃない? 三重のどこかだったと思うけど、調べたらすぐにわかるよ。

そんなふうにあの手この手で気を引こうとしても、わたしはめそめそしている。わたしは、わたしに背を向けて、読みかけの本のページをひらいたけれど、文字も紙も言葉もすべて、なにかあじけない。うしろではわたしがまだ泣いている。

『生きるための文学』プチグラパブリッシング

    箱入り、シンプルできれいな装丁。

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坂口安吾『風と光と二十の私と』

有島武郎小さき者へ

宮本百合子『生活のなかにある美について』

梶井基次郎Kの昇天

高村光太郎『智恵子の半生』

中原中也『亡弟』

堀辰雄『窓』

 

    以上の作品を集めた短編集。書名が『生きるための文学』、帯には「今、生きている実感」とある。ちょっと、風呂敷が大きすぎる感がある。

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  各作品の初出情報の記載がない。どこにいつ載ったのかくらいは書いておいてほしい。宮本百合子のなんて、暮らしと日常の美がテーマなのに、いつの時代の話かわかりにくいし。文中に「十五銭」と出てきてようやくわかる。

    有島武郎の『小さき者へ』がよかった。何がいいかといえば、出産シーン。「小さき者」のうちの一人が産まれる場面だ。有島とその妻は3人の子を成した。そのうちの1回は難産であったらしく長時間に及び、途中に産婦の昏睡状態をはさみながらようやく産まれるのだが、描写に凄みがある。今も昔もお産に「普通」はないというが、“お産シーングランプリ”のようなものがあれば、わたしはこれを推したい。

 

夏の花

   ここ数日、朝晩だけは過ごしやすい。今朝の明け方など、扇風機をかけっぱなしで寝ていたところ、ひやっとして4時前に目が覚めた。日の出の時刻は確実に遅くなっている。季節は進む。とはいえ、昼間の暑さは今が盛りで辟易する。

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  暑いので花を買わない。昼間それなりに温度が上がる閉めきられた部屋では、花がすぐに傷む。外の植木はとてもたくさんの水を欲しがるから、朝一番にたっぷりと水をやるのを忘れると、昼間の職場で心配になる。

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  この時期あちこちで見かける凌霄花は、刺すような陽射しの下で次々に花をつけてオレンジ色鮮やかでたくましい。わずかだが有毒の植物らしい。

  夾竹桃は見るからに強そうだ。葉にも花にもたくさん保水して、ちょっとの風にはなびかない頑固な感じが美しい。造園の仕事をしている人に聞いたことがあるが、「切っても切っても生えてきよる」らしい。その強靭さゆえなのか、公園や高速道路の側道にある土手のような、わりと過酷そうな場所に植えられているのをよく目にする。夏のあいだ、その環境でひたすら咲き続ける。

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  夾竹桃にも毒がある。 葉か花が落ちた池で魚が死んで浮いていた、という話を知人に聞いたことがある。魚は水の中から上を見て、綺麗だなあと花をながめていたかもしれない。その毒で死んだかもしれない。たぶんそういう話だろうと、わたしは思う。

 

  

  

 

 

夕食

  冬瓜とミョウガの煮物、白瓜のシーチキン和えで、ウリづくし。昼下がりのスーパーで、夏野菜が安い。本よみながら昼寝してからの、早めの夕飯。幸せだ。