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井伏鱒二『山椒魚・遙拝隊長 他7編』岩波文庫

 古書店で催された読書会の課題図書。

 自分からはなかなか手をのばさいだろうという作品を、わりあい真剣に読む動機づけになるのが、この手の会に参加することのよい点だと思う。

 読んでいて少しきつかった。山椒魚の言うこと為すこと、あまりに情けないではないか。その情けなさはよく知っているものであるから、なおさらしんどいのだ。そのような読み方は一般的な読み方を自分に反射させたものであり、それもまたつまらない。情けなくつまらないが、小説の言葉を読み考える経験を久しぶりにした。

 読書会では得るものが多かった。

 田舎で山椒魚を釣った経験のある人の話から、蛙と山椒魚は餌と捕食者の関係が成立し得ることを知った。幽閉状態での彼らの関係、思っていたのとちょっと違うことになる。

 てだれの本読みと思しき人は、この小説のプロットはわりと平凡ではないかと思っていたらしい。その平凡なプロットに私はずいぶんとダメージを受けてしまっていたので、あらためて年来の自分の悩みなどゴミのようなものだと思った。

 熱烈で強烈な井伏ファンもいた。そのような人には初めて出会ったが、ゴミのような自分には到達できない境地に生きている人だ。自分の生に絶対的な信頼を置くことが、あたりまえで自然。その人とても魅力的な人だった。

 井伏はその独自の観察眼で、生物としての山椒魚をどのように見ていたのだろうか。井伏は人間、社会、自然どれをもよく「観て」いた人のように思うのだが、どうなのだろうか。